見込み違い客
財布を新調しようかなと思い、某ブランド店へ行きました。
メンズは3階と言われエレベーターで上へ。
えーっと、財布財布、と見回していたら間もなく一人の男性店員さんが話しかけてきます。
「ハイ!こちらのショルダーバッグ、今シーズンの新作となっておりマッス!」
バッグはいらなかったんですが、気づくと試着を断りきれずたすきがけにしてポーズを決めている、弱い自分がいたのでした。手ぶらだったからこの人カバンなくて可哀想とでも思われたのかな。
笑ってごまかしてこのカラミは適当に切り上げようとしたんですが、
「ハイ!ではこちらのタイプなどはっ?!」
と彼は次から次へと僕にカバンを背負わせてきます。
買う気ないから気まずくて彼と目を合わせられません。僕の神経が消耗していきます。
4つ目のたすきがけが終わった時点で、このカバンを彼の頭から被せてその隙に逃げてしまおうかと思うくらい追い詰められた僕は、蚊の鳴くような声で
「・・・よく分かりましたので。」
と言い残し、フラフラになってバッグ売場から立ち去ったのでした。
メンズウェア売場に避難した僕に妻が言いました。
「あの店員さんいろいろ親切に持ってきてくれたけど、最後にカバンしまうときの目つきメッチャ恐かったよ!」
ああ見なくてよかった。
そんなもん見ていたら、休日のパパが真っ白になっていたからね。
体力の限界。財布を探す気力もなくなり、帰宅することになりました。
そして、さあ1階に降りようとエレベーターへ向かうと、そこにいたのは開いたドアを押さえて立っている彼でした。